異空間
まずは何もかもを見透かしたような瞳、次に物欲しげに彷徨う唇、最後に規則正しく滑らかに動く、左手。***「君、彼女はいるの?」「どうしてそういうこと、聞くの?」「聞いたら駄目だった?」「いや、いるけど、どうして?」イメージの相違と崩壊は、わ…
悲しみが呼応する様を静かにじつと眺めていた。つまりひとはこれを恋と呼ぶのだけれども、あたしはそれがどうしても信じられない。悲しみが呼応する様を静かにじつと眺めていた。確かにこれは悲しみだ、あたしはずつとそれを知っていたのに。悲しみが呼応す…
鼓動透き通る白い肌とその奥にある青い血管を眺めていたら、その上下する喉に行き着いた。喉元にはじとりと滲む汗、しかし彼女が太陽を睨みつけた瞬間それは空に散ってしまった。夏はいい。一枚、また一枚と脱ぎ捨てられる服。夏はいい。照りつける太陽に反…